内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
◇
「終わった……!」
目の前のパソコンに最後の一文字を打ち終えた藍里は、天井に向かってうーんと大きく伸びをした。
目録を作り始めてから七か月。
璃子が眠ってからコツコツ作業を進めてきたが、ついに目録が完成した。
(あとはプリントアウトして、軽く製本するだけね)
目録作りを始めたのは春だったが、今や季節はすっかり秋に変わった。
乱雑だったコレクションルームも目録作りが進むにつれて整備され、本来の役割に精を出している。
(我ながらよくやったわ!)
藍里の胸の中は例えようのない達成感で溢れていた。
蒼佑の祖父のコレクションは、当初の予想を超え、細かいものを含め三百点以上もあった。どれも美術的・工芸的な価値が認められるものばかりで、寄贈先からもきっと喜ばれること請け合いだ。
(早く蒼佑さんにも教えたいな)
本当なら今すぐ執務室に駆け込んで蒼佑に報告するところだが、こういうときに限って仕事先との会食の予定が入り、帰りが遅くなると連絡があった。
(帰ってくるまで待っていようかな)
蒼佑なら目録の完成を自分のことのように喜んでくれるだろう。ぜひ喜びを一緒に分かち合いたい。
藍里は床掃除をしながら、蒼佑の帰りを今か今かと待ち侘びた。
気分が高揚し、あまり上手とは言えない鼻歌まで歌い始めたそのとき、廊下からガタンと物音がした。