内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

(蒼佑さんだ!)

 藍里は喜び勇んでコレクションルームから出て、廊下へ飛び出した。

「蒼佑さん?」

 薄暗い廊下を歩く人影に背後から声を掛けると、怯えたようにビクンと肩が大きく揺れる。
 声を掛けてから気づいたが、その人影は蒼佑とは似ても似つかないシルエットをしていた。

「あ、藍里……」

 侵入者は下手くそな愛想笑いを浮かべつつ、恐るおそる背後を振り返る。
 その顔に見覚えがある。一週間前に眺めたばかりだ。

「叔父さん……」

 にわかには信じがたかった。ここは三角家の所有する屋敷だ。父のアトリエに勝手に侵入するのとは、わけが違う。

「どうしてここに?」
「あ、いや、そのっ……」

 ドスのきいた強い口調で問い詰めると、譲治は途端にしどろもどろになった。
 招いた覚えもないのに、勝手に屋敷に侵入したのだ。警察に突き出されても、文句は言えまい。

「この屋敷に大空を駆ける鷹はないわ。三角美術館で展示されているから」

 先んじて忠告すると、ギクンと叔父の肩が震える。どうやら図星だったようだ。
< 167 / 187 >

この作品をシェア

pagetop