内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「叔父を許してくださってありがとうございます」
この日の仮宿となるホテルへと向かうタクシーの中、藍里は蒼佑に頭を下げた。
「これで怪しげな投資話からも手を引いてもらえるといいがな」
今まで目を逸らし続けていた事実を認めるのには、時間がかかるかもしれない。
それでも、譲治の中に妬み嫉み以外の感情が残っていると信じてみたい。
(あとは叔父さん次第ね……)
自分に出来ることはなにもないのだと、藍里はようやく肩の荷を下ろすことができた。
「藍里?」
藍里は蒼佑の肩に身体を預け、彼のシャツをぎゅっと握り締めた。
「父の絵を守ってくれてありがとうございました。でも、もうあんな無茶はしないでください」
訴える声が次第に震えていくのがわかった。
「絵も大事ですけど、蒼佑さんだって私にとってはかけがえない人なんです。蒼佑さんが死んじゃうかもしれないって……私、本気でっ!」
「ごめん」
蒼佑は素直に謝ると、今にも泣きだしそうな妻の額に口づけた。