内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
◇
消防による懸命の消火活動が行われた結果、屋敷はなんとか全焼を免れた。
骨組みや壁など鉄筋コンクリート部分は残ったものの、木造部分はほぼ焼けてしまった。
火事の翌日、璃子をベビーシッターに預けたあと、焼け跡の様子を蒼佑と見にやって来た藍里はショックを受けた。
「おじい様のコレクションが……!」
「せっかく目録を作ってもらったのにな」
消火活動の過程で水を被ったり、熱で絵の具が変色したりで、蒼佑の祖父のコレクションルームのほとんどがダメになってしまった。残ったのは彫刻などのほんの一部だ。
屋敷の中ではすでに警察と消防による現場検証が始まっている。藍里も火事当時の様子の聞き取りを依頼された。
ひとつ解せないのは、火事の火元が厨房の中ではなく、厨房の裏にあるゴミ箱だったことである。
小牧への聞き取りでは火事発生当時、ゴミ箱の中には自然に発火するようなものは、なにも入っていなかったらしい。
警察も放火の疑いも視野に入れて捜査を進めるそうだ。
(どういうことなの?)
周囲には他に建物もなく、この屋敷が狙われたのは明らかだった。
他人から火をつけたいと思われるほどの恨みを買っている。その事実に寒気がした。
(怖い……)
自分で自分の身体を抱き締めたそのとき、驚くべき知らせが耳に入る。
――敷地内にある林の中で麗佳が保護されたらしい。