内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
(どうして麗佳さんが?)
訳が分からないまま、蒼佑と共に彼女が保護されているというパトカーへ向かう。
「蒼佑さん!」
麗佳は蒼佑を見つけると、ぱあっと明るい表情を見せた。
頭から毛布を被り、パジャマに薄手のガウンを羽織っただけの着の身着のままの状態で、靴も履いておらず裸足だ。
本格的な冬が訪れる前だとはいえ、ひと晩を林の中で過ごしたのだ。
身体は衰弱しきっているはずなのに、蒼佑を見つめる瞳には爛々と光が灯っている。
「やっと私のもとに来てくれたんですね! 信じていました!」
顔を煤だらけにしてなお、蒼佑への愛を語る彼女は常軌を逸していた。
風が吹いたら飛んでいきそうな、どこか危ういものを感じる。
「火をつけたのはあなたですか?」
蒼佑が尋ねると麗佳はきょとんと目を丸くした。
「ええ。だって、屋敷がなくなれば蒼佑さんは私のところにきてくれるでしょう?」
恐ろしいことに、彼女には罪悪感が一切感じられない。
自身の行いを正当化するでもなく、かといって泣いて縋るようなこともしない。
蒼佑と結婚するためという大義名分の前には、放火すらやってのける。
独りよがりの狂気に背中がゾッとする。
「蒼佑さん? どうしたの?」
さすがの蒼佑も彼女の言動には血の気が引いたようだ。
大きく息を吐き出すと、付き添いの女性警察官に告げる。