内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
◇
「そんなに緊張しなくても大丈夫だ」
「そんなの無理ですよ!」
屋敷が焼けてしまって、しばらくはホテル暮らしをしていたが、璃子もいる以上いつまでも借りぐらしとはいかない。
藍里たちは相談した結果、屋敷の建て直しが終わるまでの間、蒼佑の両親が住む本邸に身を寄せることになった。
今日はその挨拶に訪れたのだ。
事情はある程度話してあると蒼佑から聞いているが、なんの後ろ盾のないシングルマザーの藍里との結婚を両親はどう思っているのだろう。
勝手に蒼佑の子どもを産んだことに対して、不信感を抱かれていないだろうか。
大丈夫だと気休めを言われても、藍里の不安はどうしたって尽きない。
広々としたリビングルームに案内されると、緊張は否応なしに高まる。
蒼佑の両親はソファに腰掛け、藍里たちの到着を待っていた。
「は、初めまして! 藍里です!」
「りこでしゅ!」
リビングに入るなり、いの一番に名前を告げて挨拶すると、すかさず璃子に真似されガクッと力が抜ける。
(もうっ! 璃子ったら!)
舌足らずの璃子の自己紹介に、蒼佑の両親はうっとりと目尻を垂れた。
突然現れた孫という存在に驚いているものの、璃子を見つめる瞳は慈愛に満ちているのがわかる。
(優しそうな人たちでよかった)
なんとかして璃子と遊ぼうと試みる両親の様子を見て、藍里はホッと胸を撫で下ろした。
「ほらな。大丈夫だって言っただろう?」
唯一、蒼佑だけが得意げに笑っている。
その後、同居の話は本格的に進められていき、数日の内にホテルを引き払い本邸に移ることになった。