内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
エピローグ

「ママ? まだ?」
「ごめんね。あとちょっとだけ!」
「さっきからずっと同じこと言ってるじゃん!」
「本当にあとちょっとだから!」

 藍里がなだめると、璃子はむうっと顔をしかめながらも大人しくもとの位置に戻ってくれた。
 カラリと晴れた五月の晴れの日ではあるが、かれこれ一時間はレジャーシートの上には座っているのだ。璃子が不満を漏らすのも無理はない。
 あれから四年の月日が流れた。
 火事で焼けてしまった三角家の屋敷は二年の工事期間を経て建て直された。
 屋敷に来たときはまだ赤ん坊の名残があった璃子も、来年から小学生になる。
 たどたどしかった言葉遣いもすっかり達者になり、最近は藍里に対してあれこれ小言を言うようになってきた。

「璃子、静かにしていないと青唯(あおい)が起きるぞ」

 璃子はハッとした様子で口を押さえた。

「青唯くん、ごめんね」

 璃子は先ほどとは打って変わってニコニコと顔を綻ばせ、蒼佑に抱かれている弟の頬を愛し気に撫でた。
 藍里は建て直された屋敷での生活が始まると同時に、新しい命である青唯を授かった。
 璃子は生まれて半年の弟に夢中だ。
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