内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「今日は疲れただろう。ゆっくり寛いでくれ」
蒼佑はそう言いながら、ジャケットを脱いでいった。
(く、寛げって言われても……)
藍里はあてもなく、ただあちこち視線を彷徨わせるばかりだった。
最高級のソファは座り心地がよさそうだが、本当の腰を下ろしていいのか定かではない。
ぎこちない藍里に対し、蒼佑には余裕があった。
スイートルームに泊まっているくらいだ。
もしかして、彼はとんでもない資産家なのだろうか?
「君の部屋はこちらだ。シャワーもトイレもついている。俺は反対側の部屋で寝るから、気兼ねなく使っていい」
蒼佑はそう言うとリビングルームにある扉のひとつを開け放った。スイートルームにはメインルームの他にもゲストルームまで完備されているらしい。
部屋が余っているというのは本当だったみたいだ。
「夕食はルームサービスにする? それとも外で食べる? 近くにピッツァがおすすめのレストランがある」
「あ、えっと……」
矢継ぎ早に物事が進んでいき、藍里は戸惑うばかりだった。
自分の身に降りかかった事態に、まだ思考が追いついていないのだ。
口ごもる藍里の様子を見て蒼佑はようやく自分が先に進んでいることに気がついたようだ。