内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「なにはともあれ、結婚おめでとう」
「ありがとうございます」
「っていうか、なんでいきなり結婚することになったの?」
郡司の質問に答えるべく、藍里はかいつまんで事の次第を説明した。
三年前のフィレンツェ研修の際、蒼佑と出会い、璃子を宿したこと。
父のアトリエにやって来た彼と再会したこと。
売買契約書を盾にされた件については、あらぬ心配をかけぬよう詳細を伏せた。
「はあ……。なんか映画か小説みたいな話だね」
郡司は感心したように、大きく息を吐き出した。いきなり壮大なストーリーを聞かされ、お腹がいっぱいの気分だったのだろう。
すべてを話し終えたころには食事も終わってしまい、藍里は曖昧に笑いながら、食後の紅茶に口をつけた。
「結婚するってことは引っ越すの?」
「はい。彼と一緒に住むことになりますから。新しい保育園も決まりました」
璃子の通う保育園には結婚と転園の報告を既に済ませてある。
結婚は承諾したものの、藍里は仕事を辞めるつもりは一切ない。
蒼佑もそれでいいと言ってくれており、率先して新しい保育園を探してくれた。
その甲斐あって、新しい保育園は新居となる三角家の屋敷の近くに決まった。
転園先は役所への申請が必要な認可保育園ではなく、目ん玉が飛び出るくらい高い月謝を払う認可外保育園だ。
藍里も璃子と一度見学に訪れたが、木の温もりが感じられる園舎で、広い園庭には芝生が敷かれており、璃子も気に入った様子だった。