内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「このコレクションは最終的にどうするつもりなんですか?」
「気に入った数点を残して残りは三角美術館に収蔵するか、コレクター仲間に譲る予定だ。ここで眠らせておくよりはずっといいからな」
藍里も同意するように深く頷いた。
蒼佑が手伝いを買って出てくれたおかげで、作業は順調に進んだ。朱塗りの漆器、龍の水墨画と、次々と目録作りに必要な項目をチェックする。
「あっ」
黙々と作業を続けていた中、ある掛け軸を広げたときに藍里は思わず小さな声を漏らした。
「どうした? なにか掘り出し物でもあったか?」
藍里の驚く声を聞きつけた蒼佑は、にわかに浮き立った。
ワクワクしているのが、表情からも隠しきれていない。
宝物の存在を期待するなんて、まるで子どものようだ。
しかし、残念ながら藍里が見つけたのは、蒼佑の期待に沿えるような代物ではない。
「ふふっ! 見てください。かわいい仔犬の掛け軸です」
藍里が見せたのは、口からベロを出した三匹の仔犬たちが描かれた掛け軸だ。
三者三様のお茶目な様子で、じいっとこちらを眺めている。