お嬢様、庭に恋をしました。

好きって伝えたよ、って言ったら、叫ばれた

「えええええええええええええええええええええ!!!???」

スマホの向こう、美羽の声がカフェの壁を揺らした。
 
「ちょっと美羽、声!! 外!!」

「無理!! そんなもん無理に決まってるでしょ!!」
 
舞花はカフェラテを啜りながら、
にやけそうな口元をマスクで隠していた。
 
──美羽とは、週1で通ってるカフェ。
今日は“緊急報告あり”というLINEだけで呼び出した。
まさかこんな騒がれるとは思ってたけど、
想像を3周は超えていた。
 
「え、ほんとに言ったの? “好きです”って?」

「うん……ちゃんと、自分から」
 
「まじで!? え、で!?で!?どんな反応だったの!?」

「えっと……“ずるいですね”って言われた」

「わかんない!!なにそれ!?」
 
「で、でもそのあと、ちゃんと……“俺も、です”って」
 
「ぎゃあああああああああああああ!!!」(2回目)
 
舞花は思わずカップをテーブルに置いて、
顔を手で覆った。

「ほんと、やめて……私が恥ずかしくなる……」

「いやごめん、でもそれはもう叫ばずにはいられんのよ……
舞花、あんた、あんたね……!」
 
美羽はテーブルにバンッと手を置いて、
目を潤ませながら叫んだ。
 
「恋、してんじゃん……!」
 
「……やだ、なにその青春マンガの1ページみたいな台詞」
「いや違うの! もう顔が完全にそうなってるのよ!
お嬢なのに、デレてんの!! かわいすぎるの!!」
 
「ちょっと、落ち着いて……」
 
「落ち着けないの! こんなんプロポーズされたって聞いたレベルよ!?
ねえ、これってもう告白成功で付き合ってる感じなの? え?ねえ?」

「……そこは、まだ“これから”って感じかな」
 
そう言って、舞花はふっと目を伏せた。
 
「でもね、ちゃんと気持ちは通じたよ。
椎名さんも、強くなるって言ってくれた。
……だから、私も、ちゃんと頑張る」
 
それは、舞花なりの“覚悟”の言葉だった。
お嬢様とか、家柄とか、そういうものを超えて、
“好き”という想いで、隣に並びたい。
 
「舞花……」
 
「……でね、昨日、ハグされた」
「ギャーーーーーーー!!!!!」(3回目)
「ねえほんとお願い、追い出される前に静かにして……!!」
 
店員に苦笑いされながら、
でも心はどこまでもあたたかくて。
 
舞花の恋は、ちゃんと始まったんだと、
ようやく実感できた午後だった。

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