男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女は秘密を共有する 3
「やはり気持ちがいいな」
「だろー?」
再び、私たちは空にいた。
今日は月がほぼ真ん円でこの間より大分視界が明るい。その分星は見えにくかったが絶景に変わりはなかった。
ラディスは2回目にして慣れたのか、前回よりも私の手を握る力が優しかった。
「でも悪かったな。結構待っただろ? 同室の奴が寝てからと思ったんだけど今日に限ってなかなか寝てくれなくてさ」
イリアスがいびきをかき始めたのを見計らって部屋を抜け出したのだが、急いで寄宿舎の端っこにある武器庫裏に行くとラディスは特に苛ついた様子なく私を待っていた。
もしかしたら1、2時間待たせてしまったかもしれないのにだ。
「いや、構わない」
景色を眺めながら穏やかな顔で言った奴を見て、私はふと思っていることを口にしていた。
「ほんと、昼間とは別人みたいだな」
「は?」
「いつもはあんなに怒鳴ってるのに、今は静かだなぁと」
するとラディスは眉を寄せた。
「それは、」
「あー、わかってる。騎士団長の立場があるもんな。……ただ、ちょっと勿体ないなぁと」
「勿体ない?」