あやまちは、あなたの腕の中で〜お見合い相手と結婚したくないので、純潔はあなたに捧げます〜
*
そして気づけば、縁談はあれよという間に進んでいた。
翌週には顔合わせの場が設けられ、ひなは清栄の用意した上等な絹の着物に袖を通すことになった。
鏡に映る自分の姿は、まるで他人のようだった。
いつも着慣れた洗いざらしの作務衣ではない。色白の肌に映える淡い桃色の絹。
髪はいつもより丁寧に結い上げられ、唇にはほんのり紅が差している。
つくり物のように着飾った「令嬢」の姿に、ひな自身がいちばん戸惑っていた。
心細さを抱えたまま玄関へ向かったそのとき、ちょうど慶一郎が外出するところだった。
ふとした偶然に、二人の目が合う。
その視線に一瞬とらえられ、ひなの心臓が跳ねた。
「あ……旦那様……」
思わず声をかけると慶一郎は足を止め、ひなを見て穏やかな声で言った。
「そうか、今日が見合いの日か」
「はい……」
ひなはうつむきかけた視線を、すんでのところで上げ直した。
普段と違う自分を見られたことに、嬉しいような、恥ずかしいような、説明のつかない感情が胸の奥をくすぐる。
「その着物は?」
「大奥様が以前お召しになっていたものを、仕立て直していただきまして……」
「そうか。よく似合っている」
その一言に、ひなの胸が温かくなる。
まるで春の陽がそっと差し込んできたような、不思議な安心感に包まれた。
「あ、ありがとうございます……」
ふわりと頬が熱を帯びた。
紅を引いているせいか、それとも、慶一郎の言葉のせいなのか。
自分でもわからないまま、ひなは襟元にそっと指を添え、見えない鼓動を落ち着けようとした。
そして気づけば、縁談はあれよという間に進んでいた。
翌週には顔合わせの場が設けられ、ひなは清栄の用意した上等な絹の着物に袖を通すことになった。
鏡に映る自分の姿は、まるで他人のようだった。
いつも着慣れた洗いざらしの作務衣ではない。色白の肌に映える淡い桃色の絹。
髪はいつもより丁寧に結い上げられ、唇にはほんのり紅が差している。
つくり物のように着飾った「令嬢」の姿に、ひな自身がいちばん戸惑っていた。
心細さを抱えたまま玄関へ向かったそのとき、ちょうど慶一郎が外出するところだった。
ふとした偶然に、二人の目が合う。
その視線に一瞬とらえられ、ひなの心臓が跳ねた。
「あ……旦那様……」
思わず声をかけると慶一郎は足を止め、ひなを見て穏やかな声で言った。
「そうか、今日が見合いの日か」
「はい……」
ひなはうつむきかけた視線を、すんでのところで上げ直した。
普段と違う自分を見られたことに、嬉しいような、恥ずかしいような、説明のつかない感情が胸の奥をくすぐる。
「その着物は?」
「大奥様が以前お召しになっていたものを、仕立て直していただきまして……」
「そうか。よく似合っている」
その一言に、ひなの胸が温かくなる。
まるで春の陽がそっと差し込んできたような、不思議な安心感に包まれた。
「あ、ありがとうございます……」
ふわりと頬が熱を帯びた。
紅を引いているせいか、それとも、慶一郎の言葉のせいなのか。
自分でもわからないまま、ひなは襟元にそっと指を添え、見えない鼓動を落ち着けようとした。