あやまちは、あなたの腕の中で〜お見合い相手と結婚したくないので、純潔はあなたに捧げます〜
 あまりにも眠れないので、そっと廊下へ出た。
 涼しい風が、ひなの長い髪を揺らす。
 虫の音がかすかに耳に届き、秋の澄んだ夜空に、ぽっかりと月が浮かんでいる。
 とにかく、この縁談をやめたい。
 篠宮と結婚しても、この月を、虫の音を、美しいと思えるだろうか。幸せになれる気がしない。
 どうすれば、この縁談はなくなるのだろう。
 まるで出口の見えない迷路の中で、答えを探し続けているようだった。
 そして、篠宮から向けられたあの言葉を思い出す。
 
『念のため伺っておきますが……ひなさんは、当然ながらご清白でいらっしゃいますよね?』
 
 あの、下から上へと品定めされたような視線を思い出し、再びぞわりと肩を震わせる。
 だが、それは裏を返せば──。
 
(清白でなければ……篠宮様は、結婚をやめてくださる?)

 ふと、そんな考えが頭をよぎる。
 清白でなければ──改めて考えると、なんてはしたないことを思ってしまったのだろうと、恥ずかしさで、ひなの体はかっと熱くなる。
 そもそも、そんな相手もいないのに。

 そんなことを思っていると、背後から、ひたりと静かな足音が聞こえた。
 
「……ひな?」
 
 振り返ると、そこにいたのは寝間着(パジャマ)姿の慶一郎だった。
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