皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい
「麗しの花嫁に会いに来たよ」

 これまでの幸せな記憶を辿っていると、コンコンとドアをノックする音がした。
 部屋に入ってきたのは、白のタキシード姿が眩しい幸崎さんだった。

「あー!式の前に見ちゃダメですって!」
「ちょっとくらいいいだろ?」

 雪が慌てて間に割って入るものの、幸崎さんはいたずらっ子のように笑っていなす。
 押し問答をする二人がおかしくて、思わず笑っていると、幸崎さんがゆっくりとこちらに近づいてきた。

「いつも可愛いと思っていたけど、今日はものすごく素敵だよ」

 繊細なガラス細工を扱うように彼はそっと私の手を取り、その指先に口づけを落とす。

 「ずっとこの日を待っていたよ。これからもどうかよろしくね」
 
 その眼差しは、愛情に満ちあふれ輝いている。
 今日、私は幸崎さんの花嫁になる。
 私はこの世でたった一人の、幸崎優吾さんの大切な人。
 そして彼もまた、私の一番大切な人なのだ。

「はい。これからも、ずっとよろしくお願いします」

 彼の腕に手を添えて、赤い絨毯を歩き始める。
 私達の結婚式が始まろうとしていた。
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