寡黙な消防士は秘密の娘ごと、復讐を終えた妻を溺愛する
「はい、どうぞ」
「いただきます!」

 夏希は小さな指先を使ってスプーンでアイスを掬い、口の中に入れる。

「きゃー! パチパチー!」

 パチパチと弾ける感覚に声を上げて笑う姿を見ながら、私もアイスが溶けてしまう前に食べ進めた。

「ままも、食べる?」
「私は、いいや……」
「おいしいよ?」
「口の中で弾けるのは、ちょっとね。早く食べないと、溶けちゃうよ」
「たいへん!」

 夏希は慌てた様子で自分に食べさせるのを止め、アイスを急いで口の中に放り込む。そのたびに嬉しそうに声を上げる姿を見つめながら、私は念の為周りを見渡した。
 迷惑になっていないかを確認するためだ。
 日中とはいえ、土日のフードコートは八割方席が埋まっている。
 元気が有り余っている子ども達はプレイルームだけではなく廊下でも走り回っており、娘が声を上げてはしゃいでいる程度では周りもそんなに気にはしていないようで安心する。

 ――あれ……?

 しかしそこで、私は目撃してはいけない光景を目にしてしまった。
 中華料理店の厨房から、勢いよく火の手が上がったのだ。
 それは油に引火したせいか、すぐさま炎の勢いが増していく。
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