秘密のカランコエ〜敏腕ドクターは愛しいママと子どもを二度と離さない〜
「……彩花には、パパは遠くにお仕事に行っていて、お仕事が落ち着いたらお迎えに来ると言っているんです……」
懺悔に近いものだった。
もう隠すことはできない。私の心が持たなかった。
逃げられない。身体も心も。もう、彼に背くことはできない。
年月を重ねるごとに増してきた罪悪感ごと吐き出してしまう。
「そのパパってのは、今はどこに」
宗一郎さんのこめかみには青筋が通っていた。
眉間にグッと皺を寄せ、隠され続けた真実が明かされるのを待ちわびている。
私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
これを言ってしまえば、彼の人生が変わってしまうかもしれない。
着実に築かれてきた栄光の未来が、崩れてしまうかもしれない。
それでも、私の口から真実を打ち明けなくてはいけないのだ。
「……今、ここに──」
私は俯いて、彼に背を向けて呟いた。
真夜中の静かな病室には十分すぎる声量だった。
「……それはつまり」
「あなたが彩花のパパなの」
彩花はにっこりと微笑んで、幸せな夢の続きを見ている。
彩花は、その夢がいつか現実になることを望んでいたのだ。
初めて聞く言葉だった。
それを聞いて、私は母親としての覚悟が決まった。私が傷つくのは構わない。たとえ宗一郎さんの未来を奪ってしまったとしても、この子に必要なものはそんなものではない。
「ごめんね、彩花……今まで嘘ついて……」
私が愛しい我が子の「父親」を奪ってしまったことに変わりはない。そんな罪悪感も生まれていた。
膝から崩れ落ちた私は、高いベッド柵をギュッと強く握り締める。
ギリギリと音を立てそうなほど強く握った手に力が入らなくなってきたかと思えば、涙を堰き止めていたものがなくなり一気に溢れ出した。
ただ震える私を、後ろからそっと優しく包み込む温もりを素直に受け入れた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
この言葉以外、紡ぐことが出来ない。
私はなんて愚かだったのだろうか。
私は未来を壊してしまうのが怖かった。でも、宗一郎さんは私との未来を築きたかったのだ。
たとえ私が恐れていた未来が訪れたとしても、宗一郎さんは構わないと思っていたのかもしれない。
「やっぱりそうだったのか……嬉しいよ」
耳元で囁くその声は、甘く蕩けるような懐かしい声。あの頃の幸せな思い出が色を取り戻していく。
私と彼との子であることを信じて疑わない彼の一途な愛。
私はもうこの愛から逃げてはいけない。
「彩花。ごめんな、遅くなって。ただいま」
そう言うと、宗一郎さんは彩花の頭を撫でる。
何度も何度も撫でるその姿は、まさしく父親であった。
懺悔に近いものだった。
もう隠すことはできない。私の心が持たなかった。
逃げられない。身体も心も。もう、彼に背くことはできない。
年月を重ねるごとに増してきた罪悪感ごと吐き出してしまう。
「そのパパってのは、今はどこに」
宗一郎さんのこめかみには青筋が通っていた。
眉間にグッと皺を寄せ、隠され続けた真実が明かされるのを待ちわびている。
私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
これを言ってしまえば、彼の人生が変わってしまうかもしれない。
着実に築かれてきた栄光の未来が、崩れてしまうかもしれない。
それでも、私の口から真実を打ち明けなくてはいけないのだ。
「……今、ここに──」
私は俯いて、彼に背を向けて呟いた。
真夜中の静かな病室には十分すぎる声量だった。
「……それはつまり」
「あなたが彩花のパパなの」
彩花はにっこりと微笑んで、幸せな夢の続きを見ている。
彩花は、その夢がいつか現実になることを望んでいたのだ。
初めて聞く言葉だった。
それを聞いて、私は母親としての覚悟が決まった。私が傷つくのは構わない。たとえ宗一郎さんの未来を奪ってしまったとしても、この子に必要なものはそんなものではない。
「ごめんね、彩花……今まで嘘ついて……」
私が愛しい我が子の「父親」を奪ってしまったことに変わりはない。そんな罪悪感も生まれていた。
膝から崩れ落ちた私は、高いベッド柵をギュッと強く握り締める。
ギリギリと音を立てそうなほど強く握った手に力が入らなくなってきたかと思えば、涙を堰き止めていたものがなくなり一気に溢れ出した。
ただ震える私を、後ろからそっと優しく包み込む温もりを素直に受け入れた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
この言葉以外、紡ぐことが出来ない。
私はなんて愚かだったのだろうか。
私は未来を壊してしまうのが怖かった。でも、宗一郎さんは私との未来を築きたかったのだ。
たとえ私が恐れていた未来が訪れたとしても、宗一郎さんは構わないと思っていたのかもしれない。
「やっぱりそうだったのか……嬉しいよ」
耳元で囁くその声は、甘く蕩けるような懐かしい声。あの頃の幸せな思い出が色を取り戻していく。
私と彼との子であることを信じて疑わない彼の一途な愛。
私はもうこの愛から逃げてはいけない。
「彩花。ごめんな、遅くなって。ただいま」
そう言うと、宗一郎さんは彩花の頭を撫でる。
何度も何度も撫でるその姿は、まさしく父親であった。