秘密のカランコエ〜敏腕ドクターは愛しいママと子どもを二度と離さない〜
 あれから三週間後の休日。
 術後の定期的な通院や服薬を経て、乗馬体験程度の運動制限が解除された頃。

 季節はすっかり一月になり、本格的な冬の訪れを感じる約束の地を訪れていた。

 その頃には、私たちは新たな住まいとして宝星とからんこえの中間地点に一軒家タイプの貸家を借り、そこに住んでいた。
 というのも、宗一郎さんが一月から宝星に勤務し続ける派遣という形で異動の辞令があったからだ。

「ソフトクリーム! おうまさん! おはな!」

 朝から彩花は待ちきれない様子で、馬のぬいぐるみのまーちゃんを抱きしめて支度をしていた。
 ぴょんぴょんとスキップのように跳ねながら車に乗り込む姿を見て、微笑まずにはいられない。
 車で揺られること一時間半ほどでゆたかふれあいファームに到着した。

「すっかり寒くなったねぇ。新しいコートもピッタリ!」

 今日のために購入した新しいピンクのダウンコート。
 腰のあたりに付けられたリボンと裾が広がったシルエットが可愛らしくて気に入った様子だった。
 防寒具もしっかり装備して万全の体制だ。

「わー! おうまさん!」
 馬や羊のいるエリアに行くと、遠くに動物たちが見えて、より一層彩花の目の輝きが増す。
 彩花は繋いでいた手を振り払って夢中で馬のもとへ全力で走り出した。

「こら危ないぞー。……でも、あんな元気に走れるようになって本当に良かった」
「たしかにそうね。保育園でも問題なくみんなと遊べているようだし」

 宗一郎さんが感慨深く呟く。
 その言葉に私の胸の奥がじんと熱くなった。

「みてみて! 小さいおうまさん!」
 ふれあいコーナーにはポニーがいた。そこでは子ども向けのポニー乗馬体験が行われているようで、初めて見る動物に彩花は興奮する。
 乗ってみますか? と女性スタッフに声をかけられると、彩花の目が一気に輝いた。

「のるのる! のりたい!」
「では、こちらへ。乗馬体験中は保護者の方も付き添いでお近くにお願いします」

 スタッフは私たちの方を見てどちらかが付き添うように促す。

「じゃあ俺が」
「いってらっしゃい」

 小さなヘルメットをかぶりポニーの背にまたがると、彩花は最初こそ緊張で固まっていたが、スタッフが優しく引いて歩き出すと、すぐに満面の笑顔に変わった。
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