秘密のカランコエ〜敏腕ドクターは愛しいママと子どもを二度と離さない〜
 買い物に夢中になっているとあっという間に時間が過ぎていて、すでに一時間半が経過していた。
 それに気づくとなんだか歩き疲れてきた気がしたあたりで、宗一郎さんが「休憩がてらカフェでひと休みしよう」と提案してくれた。
 今の時間はちょうど空いていたようで入店後すぐに案内されて座席に座れた。
 そして、注文をして待っている間に彩花はたくさんお話してくれた。

「あやか、ほいくえんのみんなに、おねえちゃんになるんだよっていってきた」
 得意げに胸を張った彩花は、私のお腹に小さな手をそっと当てて、真剣な顔つきになる。

「ねぇ、あかちゃん。おねえちゃんだよー。はやくでてきてね」

 その無邪気な言葉に胸が熱くなる。
 命がつながり、広がっていく。

 宗一郎さんと私、そして彩花。三人で紡いできた日々が、こうして未来へと続いていく。そんな感覚に胸があたたかくなった。
 ふと視線を上げると、宗一郎さんが微笑んでいた。

「ありがとう、茉奈。俺が全部守る。大切にする」
 小さく囁かれた低い声に、胸が震える。
 あの日プロポーズの言葉とともに誓ってくれた約束を、彼は今も変わらず抱いているのだ。

 彩花はそんな私たちの会話などに興味を示さず、本棚から持ってきた絵本の間違い探しを見て楽しんでいる。
 私たちは顔を見合わせて、同時に笑った。

「あかちゃんにはやくあいたいなー」

 その笑顔の先に広がる未来は、あのカランコエの花のように強く逞しく鮮やかに咲き誇っていくに違いない。
 これまでの私が、どれだけ不安な夜を過ごしたかはわからない。

 でも、今の私にはかけがえのない家族がいる。不安なことがあっても乗り越えられる強さがある。
 そして、新たな命を迎えようとしている。
 これからも家族みんなで幸せになれますようにと願いながら、私はぽこぽこと蹴られるおなかを撫でた。
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