酒好きがバレて追放された元聖女ですが、不眠症の辺境伯様と【秘密の晩酌】はじめました 〜昼は冷徹、夜は甘々。ほろ酔い旦那様の執着愛が止まりません〜
 お腹いっぱい食べて、私たちは帰路についた。

 行きと同じく、私は彼におんぶされている。
 だって、お腹いっぱいで歩くのが面倒だったんだもの。
 彼も「酔っ払いを雪山で歩かせるわけにはいかない」と、まんざらでもない様子だった。

 揺れが心地いい。
 満腹感と、彼の体温で、強烈な睡魔が襲ってくる。

「……アマレッタ」

 彼が静かに口を開いた。

「君の聖女の力は……あんな風に使うのが、一番いいのかもしれないな」

「え……?」

「国を守るためとか、魔獣を倒すためとか……そんな悲壮なものではなく。水を綺麗にして、美味しいものを作って、君自身が笑うために」

 彼の声は優しかった。
 王都では道具として扱われてきた私の力を、彼は私のための力だと言ってくれた。

「そうですね。美味しいお酒が飲めれば、私はそれで幸せですから」

「ああ。……その幸せを、私が守ろう」

 彼は私を背負い直すように、ぎゅっと腕に力を込めた。

「君が笑っていられるなら、私はどんな敵でも凍らせてみせる。……一生、私のそばで笑っていてくれ」

 それは、愛の告白にも似ていた。
 あるいは、騎士の誓いか。

 普段は言葉足らずな彼なりの、精一杯のデレなのかもしれない。

(……はいはい。頼もしい旦那様ですね)

 返事をしようとしたけれど、まぶたが重くて開かない。
 安心感が、私を夢の中へと引きずり込んでいく。

「……ん……ありがと……フロスティ……」

 私の意識は、そこで途切れた。
 寝息を立て始めた私を乗せて、辺境伯様は雪道を歩いていく。

 その背中は、どんな寒さも寄せ付けないほど、温かかった。


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【★あとがき★】

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