酒好きがバレて追放された元聖女ですが、不眠症の辺境伯様と【秘密の晩酌】はじめました 〜昼は冷徹、夜は甘々。ほろ酔い旦那様の執着愛が止まりません〜
 真夜中の厨房。
 カチャカチャと、小気味よい音が響く。

 まな板の上にあるのは、最高級のクーベルチュールチョコレート。
 カカオ分高めの、ビターなやつだ。
 これを包丁で細かく刻んでいく。

 小鍋に牛乳を入れ、沸騰直前まで温める。
 そこに刻んだチョコを一気に投入。

 ゆっくりと混ぜる。
 熱いミルクの中で、チョコがとろりと溶けていく。
 黒と白がマーブル模様を描き、やがて艶やかな茶褐色へと変わる。

 ふわり。
 カカオの芳醇な香りが立ち上る。
 幸せの香りだ。

 だが、私の晩酌はここからが本番だ。

 取り出したるは、オレンジのリキュール『グランマルニエ』。
 これを、惜しみなくドボドボと注ぐ。

「美味しくなーれ、大人の味になーれ」

 オレンジの華やかな香りと、アルコールのツンとした刺激が、チョコの濃厚さに深みを与える。

 カップに注ぎ、仕上げに真っ白なマシュマロを三つ、ぷかぷかと浮かべる。

 熱でマシュマロの表面が溶け出し、とろとろのクリーム状になっていく。
 甘さの暴力。
 カロリーの爆弾。
 すなわち、正義だ。

 完成。
 『特製マシュマロ・ホット・チョコレート(リキュール入り)』。

 私はトレイに乗せ、冷めないうちに執務室へと急いだ。
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