破   壊
 拘置所の面会室で彼を見た印象は、一言で言えば、狂気としか感じなかった。

 私自身に、もっと具体的に言い表せる語彙が備わっていれば、相応しい言葉があっただろうと思う。

 もう一つ感じた点は、彼は人を自分の話に引き込むものを持っていた。

 聞くにも悍ましい話であるのに、私は知らず知らずのうちに、耳を傾けていたのだ。

 事前に筧 亮太の略歴を調べてはいた。

 彼の父親は、話してくれた通り、彼が中学一年の時に病気で死んでいる。

 当時の病院に問い合わせると、死因は多臓器不全による心停止と言われた。

 癌が身体中を蝕んでいたらしい。

 死亡診断書では、そうとしか書いていない。

 母親は、元々筧 亮太の実母では無い。

 叔母に当たる。

 彼を産んだ母親は、佐和子と戸籍簿に記載されているが、出産後死亡としか記録されてなく、詳しい経緯は不明だ。

 一年後、佐和子の妹である早苗が後添いになり、籍に入れられた。

 その早苗だが、戸籍簿では失踪者扱いになっている。

 失踪の手続き申請が筧亮太の手で出されたのは、七年前となっていて、手紙に書かれている通りならば、彼女はもうこの世には居ない事になる。

 本人の学校の成績は良かったのであろう。

 高校、大学と、いずれも奨学金で進学している。

 在校時の評判は、特に目立った所も無く、どちらかと言えば陰の薄い存在だったようだ。

 猟奇的殺人事件や特殊な性犯罪を犯す人物には、比較的こういうタイプが多いと、何かの本に書かれてあったのを思い出した。

 ただ、彼が話してる事の全てが事実かどうかは、まだ判らない。

 現在、警察の方でもその件で彼に何度か接見しているらしい。





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