君を愛す ただ君を……
『あ、そうなの』と口を開こうとするなり、あたしの唇は越智君に奪われた

多くの人が行き交う駅前通りで、あたしの唇は越智君の舌でこじ開けられる

左腕で腰を掴まれ、ぐっと引き寄せられると越智君のキスの激しさが増した

「涼宮、俺の部屋に来ない? 一人暮らしなんだ」

熱い吐息の越智君が、あたしの耳元で誘ってくる

「あ…でも…」

越智君、婚約してるんじゃないの?

あの軽部先生と?

「7年ぶりに再会したんだ。話がしたいよ」

越智君の寂しそうな声に、あたしはつい頷いてしまった

あたしも話がしたいって思ってたし、でも時間的に無理で、それに越智君には婚約者がいて…

心の隅に引っかかりを感じながらも、あたしは越智君と手を繋いでコインパーキングに停めてある車に向かった

少しだけ…明日の仕事に支障をきたさない程度に軽く話をして、それから寮に帰ろう

越智君だって、研修医としての初出勤で疲れているだろうから

あまり無理をさせちゃいけないよね

「越智君と職場が一緒になるなんて意外だったなあ」

あたしがぼそっと口を開くと、越智君がくすっと笑った

「俺は知ってた。涼宮があそこにいるの」

「え? なんで?」

「大学の実習で何度もあの近くには来てたから。何度も涼宮の前を通ってるのに、気付いてくれなくて。気づいてくれるまで、絶対に俺からは言わないって思ってたのに。結局、我慢できなくて…」

越智君が苦笑いを浮かべた

「全然、わからなかったよ」

「俺はすぐにわかったのになあ」

越智君があたしの肩を抱き寄せた

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