君を愛す ただ君を……
「涼宮っ!」

人ごみの中から、越智君の声がした

あたしとレイちゃんが振り返ると、スーツ姿の越智君がすぐに近くまで来ていた

「うわ…追いかけてきた」

レイちゃんが驚いた声をあげる

「なんで?」

あたしは首を捻ると、目の前で足をとめた越智君を見上げた

「ごめん。店に行けなくて」

「あ…いいよ。用があったんでしょ?」

「少し飲まない?」

「もう遅いから。明日も仕事があるし」

「じゃあ、家まで送る」

あたしはレイちゃんの顔を見た

「あたし、レイちゃんと一緒に帰るし…」

「あ…私、寄るところがあるからっ! バカの差し入れを買わないとだし。じゃあね」

レイちゃんは片手をあげると、スタスタと離れて行った

ちょっと、レイちゃん!

あたしを置いていかないでよ

いきなり越智君と二人で話すなんて、緊張でどうにかなりそうなんだけど

「あははっ。置いて行かれちゃった」

あたしは乾いた笑いをあげると、ふうっと息を吐いた

「送るよ」

「軽部先生はいいの?」

「タクシーを拾ったから」

「そうなんだ」

あたしはぎこちない笑顔で笑うと、歩き出した

「そっちじゃないよ。こっちに車があるから」

越智君があたしの手首をぎゅっと掴んだ

< 152 / 507 >

この作品をシェア

pagetop