ハルアトスの姫君―君の始まり―
* * *


「え…恋人…?」


シュリは頷いて肯定の意味を示した。


「…だから混乱してるんだ。お前の出会ったシャリアスが私の知るシャリアスなのかどうか自信がない。」

「……。」


何も、言葉が出てこない。恋人なら襲いに来るはずもない。
…そもそも、何故二人がバラバラになっているのかも見当がつかなかった。
シュリの口から『元恋人』だったという風には言われていない。
『過去』として語られているわけではないのは確かだった。


「…シャリアスは、もう忘れてしまったのかもしれないな。」

「え…?」

「もう何年も昔の約束だ。時効、というものだろう。」

「約束に時効なんてない!」


自分の声が荒く響く。その声に驚いたのか、シュリは目を見開いた。
ジアもジアで、いきなりそんな大きな声が出たこと、そしてその声がやや震えていたことに驚きを隠せなかった。


「…お前はびっくり箱みたいな人間だな、ジア。」

「それ、絶対褒めてないでしょ。」

「褒めている。
…約束に時効はない、か。そうであってほしいと願っていたがな。」


シュリの視線が窓の外へと移る。
風景を見ているというよりはむしろ、過去を見つめている、そんな目だった。


「100年の時は人を変えた…か。」


シュリの呟きは切なく消えた。

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