ハルアトスの姫君―君の始まり―
気まずい沈黙が二人を包む。
でもその気まずさに耐えかねて口を開いたのはジアだった。


「100年…も待ってるの?」

「お前の感覚でいう100年と私の100年は明らかに異なる。」

「それはシュリが長生きだから?」

「…端的に言えばそうなるな。
お前は100年後、もうこの世にはいない。
しかし私はきっと、お前のいなくなった世を生きている。
…いや、もしかしたら世を儚んで死んでいるかもしれないな。」

「え…?」

「約束の果たされぬ世ならば、生きる意味など本質的にない。」


シュリの声が、ジアには迷いのないものに聞こえた。だからこそ悪寒が走る。
…自殺、してしまうのではないかという良くない想像が頭をかすめる程度には。


「自殺…とかはしないよね?」

「自分で自分の命を絶つなんてことはしない。
だが、そういう道に自分の身を置くことはするかもしれないな。」

「え…それって…どういう…。」

「死を選びはしない。
だがしかし、結果として死を招くであろう道をあえて選ぶことはするかもしれない、ということだ。」


ジアには理解できない言葉だった。一生懸命シュリの言った言葉の整理を始めてはみるものの、一向にまとまる気配がない。
そんな様子を見かねたシュリが口を開く。


「…お前は理解なんかしなくていい、ジア。」

「まっ…待って。あたしだって時間かけたら…。」

「いいんだ。こんなのは私の独り言だ。独り言にいちいち付き合っていたら疲弊するぞ。
剣士が疲れて動けないようじゃどうしようもない。」


シュリの口から出てきたのは、ジアを真に心配することが端々に見え隠れする言葉だった。

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