ハルアトスの姫君―君の始まり―
「氷の涙はハルアトス王宮地下に眠る、溶けない氷のことを指すと言われてる。」

「え…?」

「的確な情報があったの…?」


キースは腕を組んだまま、柱に背を預け、目を閉じていた。
シュリの話が始まってから微動だにしない。
クロハが時々訝しげな視線をキースに送っている。


「おいシュリ。意味分かんねぇぞ。」

「何がだ?」

「なんで場所まで分かっててモノが出てこない?」

「それこそ私が知りたい。」

「は?」

「え…?どういうこと…?」

「場所まで風の噂のように流れている。
それなのにその場所に辿り着いた者はいない。」

「…理解できん。もっと砕いて説明しろ。」

「ハルアトスの王宮に、地下室は存在する。
ただ、そのどこにも氷の涙は存在していない。」

「あるのかねぇのか…どっちかにしろ。」

「全く、お前の言う通りだ。
謂れは嘘でも本当でもない。誰もその存在を証明できていない。」

「…遠いな、ハルアトス。」


クロハがぼそっと呟いた。
シュリも頷く。
キースはやはり動かない。


「ハルアトスから見たらお前たちはエフェリアの者。受け入れてくれるとは思えない。
シャリアスがハルアトスの陣営に属する者だとしたら、お前たちのことは向こう側に知れ渡っているだろう。もし…。」

「もし?」


シュリは一瞬言いにくそうに顔を歪ませたが、思い直したかのように言葉を続けた。

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