ハルアトスの姫君―君の始まり―
目を逸らさずにいるので精一杯だった。
一瞬でも逸らしたら、動揺がそのまま空気を伝って届いてしまいそうだった。
ジアの動揺を察知したらしいクロハが先に口を開く。


「…いつから気付いてたんだ?」

「私を何だと思っている?私は魔女だ。それはお前が言い当てたことだろう?」

「魔女は全知全能だとはどんな書物にも書いていなかった。」

「この家にある本を大方読み尽くしたか。
…その通り、魔女は全知全能ではない。
だからといって、ヒトほど気配に鈍感なイキモノでもないのだよ。」

「…どういう意味だ?」

「言葉通りに飲み込め。
魔女は気配、特にイキモノが纏う気配全般に敏い。ジアとミアからは多少なりとも『違い』を感じる。
たとえばクロハ、お前の纏う気配とジアやミアが纏う気配は明らかに異なる。」

「それは男女差とかそういうのをとっぱらってもか?」

「男女差というものももちろんある。
だが、それ以上にこの二人は『特殊』だ。」


今、シュリは間違いなく『二人』と言った。
ということは分かっているのだろう。
ミアが猫ではない、ということも。


「気配だけ?たったそれだけでシュリは分かっちゃうの?」

「それはきっかけに過ぎない。
気配から異変は感じた。だがそれだけでは分からないこともある。
そこでお前が探しているものだよ、ジア。」

「氷の涙…。」

「そんなものを探しているということは自ら呪われていると暴露するようなものだ。
お前の必死そうな顔を見れば尚更、呪いがその身に降りかかっていることが分かる。」

「…呪いの内容まで、分かるの?」

「さしずめ動物変化の呪いだろう?
ミアとは双子、で違いないな?」

「ええ。」

「双子だからこそ、呪いが二人で割れたか。」

「え…?」


シュリの言葉の意味が完全には汲み取れない。

< 139 / 424 >

この作品をシェア

pagetop