ハルアトスの姫君―君の始まり―
「元々、呪いは一度に一つの対象に向けてしか使うことはできない。
呪いが放つ気配というものは同じだ。だからジアとミアの気配は一部分がぴったりと重なる。
だが、ズレもある。個人差だけでは説明できないズレだ。
ミアの方が圧倒的に猫である時間が長い。元の気配は人間なのに。
それは…魔力のある者からするとあり得ない現象だ。」

「どうして…?」

「猫になる呪いがかけられたとして、かけられた対象は呪いが解けるまで一生猫だ。
元が人間である気配を纏うミアからは人間の気配が薄れていくのが常。
それなのに、人間の気配を一定量保っている。
…これはつまり、時折人間に戻っていることになる。そうでなければ人間らしい気配は戻ったりなどしない。
そしてジア、お前からも猫の気配はする。どれだけ人間でいようとも。
面白いことにお前たちの人間の気配、猫の気配は丁度半分に割ったような割合で存在してるんだ。
ここから、私はお前たちの呪いが半分に分けられた状態でかけられているのだと推測した。」

「…すごいね、シュリは。
気配だけでそんなに分かっちゃうんだ…。
ってことはほとんど最初からお見通しだったんだね。」

「気配は最初から全て伝わってくるものでもない。
話をしてみて、向き合ってみて伝わるものがある。
最初からお見通し、というのは嘘になる。」

「…そっか。」


ジアは聞こえるか聞こえないか分からないほど小さな声で呟いた。
積極的に隠してたわけではない。
でも隠したくないことでもない。
だからこそ、複雑な気持ちだった。


「…全然動揺しねぇのはなんでだ、キース?」


クロハの目がキースを鋭く捉えた。
それに気付いて、キースは柱からゆっくりと身体を起こした。


「お前も知ってたな。」

「知っていたように見える?」


キースはいつも通りの声でそう言った。

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