ハルアトスの姫君―君の始まり―
「そう気を落とすな。奴はどこかにいる。」

「そう…だよね…。」

「…私達がここにいるだろうことは近々、向こうにも掴まれる。
いや、もう掴まれているのかもしれない。
いいか、ジア。一つだけ忠告しておく。」

「な…なに…?」


シュリの濃い紫色の鋭い目があたしの両目を捉える。


「もし仮にキースに再会できたとしても、お前の知るキースらしく見えたとしても…油断はするな。決して。」

「え…?それは…。」

「言葉通りに飲み込め。
再会するキースがお前の知る〝キース〟である可能性は限りなくゼロだ。
それを忘れるな。安易に近付くな。…触れられても触れてもならない。いいな?」


首を縦に振ることしか許されないと、直感的に分かる。
それ以外に選択肢はない。


「…分かった。」


そうは答えたものの、本当はあまり自信がなかった。
会ってしまったら、再会を果たしてしまったら…自分がどう動くのかは分からない。


キースが傍にいてくれると約束してくれたあの日を思い出す。


『ジアに命を託したことも嘘じゃない。後悔もしてない。
だから…俺はジアがいてほしいと思う間はずっとそばにいるよ。』

『うん。約束。』


「…約束、破ったのはキースだもん。
あたし、怒ってるんだから!キースに会いに来たのは本当だけど怒ってるからそんな簡単に近付かないし近付かせないよ!」

「そうだな。その意気だ、ジア。」


シュリが瞳を柔らかくして微笑んだ。

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