ハルアトスの姫君―君の始まり―
【シュリside】


自分以外が寝静まった夜。
危険を承知で小屋から出た。



「…再会は近い、ジア。」



複雑な気持ちだ。
再会すればいいと思っている。そして思っていない。
独りよがりなキースの動きを止めるのはジアの役割だと思っている。それに嘘はない。
それなのに…


「…何を怯えているんだ、私は。」


ジアの再会が意図するところは〝自分の再会〟でもある。
それが何故か妙に怖い。
怖いと認めるのを躊躇してはみるものの、結局は認めざるを得ない。怖いものは怖い。


「会いたい人は…もういないはずだ。」


戻らないんだ。戻らない。
何度頭で繰り返しても、諦められない。
諦めたように周りに見せかけるのはどれだけ上手くても。


心の奥底で、諦めきれていない。


「まるで人間のようだな…私は。」


執着し、裏切られ、失って。
その度に強い自分を求められて演じて。
結果、自分に残ったものは時間と魔力だけだ。


だからこそ。
だからこそせめて、この子たちにはと願う。


「私と同じ轍を踏まぬようにと、な。」


同じ苦しみを味わうことも、自分以上の涙を流すこともしてほしくない。
傲慢な願いだと分かっていても願わずにはいられない。


「…覚悟を決めねばな、私も。」


覚悟が必要だ。
ジアにあれだけ諭しておいて、私がいざ彼を目の前にして怯んでいるようでは示しが付かない。
終わりはこの手で。共に生きる未来は有り得ないのならば、これ以上あんな姿は見たくないのだから。

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