ハルアトスの姫君―君の始まり―
失敗した、と思ったときには遅かった。
口が先に動いてしまっていた。


あたしの声に反応して、〝彼〟がゆっくりと視線をあたしに合わせていく。










「ジ…ア…。」











その声は確かにキースのものだった。
何度もこの声で自分の名が呼ばれるのを聴いた。



…はず、なのに。










「キース…なの?」



シュリの言葉が蘇ってくる。
だからこそ、キースだと言い切ることができない。

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