ハルアトスの姫君―君の始まり―
『ジア、離れるんだ。』

「え…?」


頭の中に直接響いてくる声。
…一体どこから…?
でも、この声は…


「キース…?」

『目の前の〝俺〟から離れろ、ジア!』

「ジア…どうしてここに…。」





目の前に立つ〝キース〟と、声だけの〝キース〟
その間に立つ今の自分。


見えるものと見えないもの、そのどちらに応えれば良いのか分からず、声が出ない。





「ジア…、どうして君は…。」


ゆっくりと伸びてきたキースの手。
…いつもなら、絶対に拒まない。だけど…。





「触らないでっ…!」


すっと後ろに下がり、距離を取る。



「そこから動かないで。
…近付いて…来ないで。」


声が震えた。

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