ハルアトスの姫君―君の始まり―
「〝今〟に何の影響も出ていないのならば…あの穴はどこにも繋がらなかったと考えるのが自然だ。」

「…どこにも繋がらなかったって…じゃあジョアンナは…?」

「死とも違うだろうね。適切な言葉が見つからないけど…。
時空の狭間を彷徨っている、かもしれない。」

「出てくることは…。」

「…時の魔法に必要な魔力はその辺の魔法使いが簡単に持っているものではないよ。
それこそ本当にジアだけなんじゃないかな。金の両目が持つ、信じられないほど大きな魔力。」


キースの指がそっと右頬に触れた。そのままゆっくりと頬を撫でる。


「キース…?」

「顔色、やっぱりまだよくないよね。…気になってたんだ。
もしかしたら封印があんまり上手くいかなかったのかもしれない。」

「え…。」

「俺の魔力なんてジアの魔力を目の前にしたら塵みたいなものだよ。俺と同等の魔力は無理矢理抑え込んだけど、それでもジアの体内を自由に動きまわれる魔力は多い。
…身体がだるいのは、魔力がまだ馴染んでないからだと思う。」

「…それは…ちゃんと勉強してどうにかする。使いこなせないようじゃやっていけないから…。
ねぇ、キース。」

「…なに?」

「じゃあジョアンナはあの空間のどこかにいたまま出て来ていないってこと?」

「一応、予想ではとだけ言っておこうかな。確証はないから。」

「でも理論上、あたしよりももっと理解の早い人が聞いたら納得してくれるような予想なんだよね?」

「そうだね。シュリ様やシャリアスには納得してもらったよ。」

「力を使いこなせるようになったあたしがあの空間にもう一度入ってジョアンナを探して外に出すことは…。」

「可能だろうね。でも、ヴィステンは出て来れない。」

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