ハルアトスの姫君―君の始まり―
「…そう…だよね…。」

「うん。だから…彼女はまた繰り返す。哀しみを。そして破壊を。」

「それは…やっぱり…悲しい。」


悲しみから生まれた破壊は、また新たな悲しみを生んだだけだった。
ヴィステンを想う気持ちはきっと、シュリがシャリアスを想うのと同じくらいに純粋で温かいものだったのだろう。それはほんの少し見た過去から、痛いほど伝わって来た。
だからこそ、…これで良かったと思うしかない。今は。


「二人を離れ離れにするのは…もう嫌…。」

「…ジアはきっとそう言うだろうって思ってた。」


そう言うと、キースはベッドに座り直した。


「…ジアは優しすぎる。剣士としては致命傷なくらいにね。」

「え…?」

「ジア。ジョアンナとヴィステンのことにこれ以上俺たちは首を突っ込んじゃいけないよ。
君が優しいのは痛いほどよく分かってる。それに君はジョアンナの死を望んでいたわけじゃない。だから、君にとってこの終わりはきっと不本意なんだとも思ってるよ。
…だけど、俺が…俺が嫌なんだ。」

「…キース…?」


キースが…嫌…?何が嫌なのだろう…?
次に出てくる言葉を全く予想することができない。


「もう君を傷付かせたくない。ジョアンナの生を願って気を病む君を見ていたくない。
…大切な人と一緒にいる今を、ジョアンナは不幸だと感じると思う?」


その答えは…


「思わない。…大丈夫だよ、キース。あたしはそんなに弱くない。
ジョアンナはこの世界が生きにくかった。…んだと思うことにするから。」


あたしがそう言うと、キースが少しだけ笑みを零した。

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