ハルアトスの姫君―君の始まり―
「…ジョアンナのことは…分かった。
キース、本当に何でも話してくれるの?」

「最善は尽くすよ。」

「じゃあ訊いてもいい?」

「うん。」


少しずつ、頭の中が落ち着きを取り戻してきた。


「あたしが望む間は傍にいるっていう約束を破ったことは許した…けど…。」

「うん。」

「…どうして、置いて行ったの?あたしは邪魔…だった?」


訊きたいようで訊きたくなかったことだ。
でも、ここから逃げることはあたしがしたくない。


キースがぎゅっとあたしの両手を握った。そして少し俯いたまま、口を開く。


「…邪魔なんてこと、あるわけがないよ。
あの時あった想いはただ単純に…君を守りたかった。俺のせいで傷付いてほしくなかった。」


俯いているせいで声がいつもよりもずっと小さく聞こえた。だが、両手を包むその手の強さはいつもよりもずっと強くて優しい。


「呪いを解きたかった。そのための情報が欲しかった。」

「何で一緒に行こうっていう発想に至らなかったの?」

「自分は周囲を不幸にするって思い込んでいたから…かな。」


さらにワントーン下がった声に胸がきゅっと締めつけられる。


「それは…キースの生まれとかと関係してるの?」


ぐっと踏み込んだことを訊いている自覚はあった。躊躇う気持ちがないわけじゃない。
でもそれ以上に知りたいと思ってしまった。
今までずっと閉ざされてきたキースの過去も、どんな想いで生きてきたのか
も。


ただの好奇心なんかじゃない。
キースの抱える重い何かに触れて、癒したいと強く願ったから。


何も知らないままの自分でいることをやめたい、から。

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