ハルアトスの姫君―君の始まり―
向けられた目に悪寒が走って足が竦んだ。それでもなんとか、抱えた本は手放さない。
「中途半端な汚れた存在め!」
「出て行け!」
「そうだ出て行け!」
「っ…!」
飛んできたのは風の魔法に炎の魔法を重ねたもの。
つまり、一瞬で火傷に至るような攻撃魔法だった。
思考よりも先に足が動いてくれた。とにかく逃げた。足が果てるまで逃げた。
逃げる途中に聞こえた悪意ある声に、悲しいくらい耳は敏感だった。
「カリーナもなんだって人間との子どもを…。それは絶対に禁忌なのに。」
「人間と魔法使いの子どもなんて在ってはならない。それは昔からの絶対のきまりだろうに。」
「カリーナだって良い魔法使いだったのになぁ…生まれた子があれか。」
「存在自体在っちゃなんねぇよな。」
「いてはいけねぇ。」
「今すぐ消えろ。お前は人間と魔法使いの両方から弾かれるべき存在なんだ。」
「消えろ!」
「消えろ!」
母さんがこの地に自分を連れて来なかった理由。それはとても簡単だった。
―――俺は生まれてはいけなかった。言葉にすればたったそれだけ。
それでも、心が死んでいくには充分だった。
「中途半端な汚れた存在め!」
「出て行け!」
「そうだ出て行け!」
「っ…!」
飛んできたのは風の魔法に炎の魔法を重ねたもの。
つまり、一瞬で火傷に至るような攻撃魔法だった。
思考よりも先に足が動いてくれた。とにかく逃げた。足が果てるまで逃げた。
逃げる途中に聞こえた悪意ある声に、悲しいくらい耳は敏感だった。
「カリーナもなんだって人間との子どもを…。それは絶対に禁忌なのに。」
「人間と魔法使いの子どもなんて在ってはならない。それは昔からの絶対のきまりだろうに。」
「カリーナだって良い魔法使いだったのになぁ…生まれた子があれか。」
「存在自体在っちゃなんねぇよな。」
「いてはいけねぇ。」
「今すぐ消えろ。お前は人間と魔法使いの両方から弾かれるべき存在なんだ。」
「消えろ!」
「消えろ!」
母さんがこの地に自分を連れて来なかった理由。それはとても簡単だった。
―――俺は生まれてはいけなかった。言葉にすればたったそれだけ。
それでも、心が死んでいくには充分だった。