ハルアトスの姫君―君の始まり―
そう問い掛けると、父さんはゆっくりとスプーンを置き、真っすぐに俺を見据えた。


「それは、父さんと母さんがなぜ一緒になったかっていうところから話した方が良さそうだね。」

「…話してくれる?」

「もちろんだよ。そういえば今まで話してなかったね。母さんがいるときにきちんと話せば良かった。」

「……。」


穏やかな父さんの表情にまた涙が込み上げてくる。でも、ここで泣いてしまってはいけないことは分かっていた。


「離れていたくなかったから、が一番答えに近いのかもしれない。人間だとか魔法使いだとかを考える前に、一人の〝人〟として母さんのことを愛していたし、今も愛している。もちろんキース、お前のこともだよ。」

「……。」

「離れる未来を選択することが、何よりも辛いと思った。だから母さんは魔法使いである自分を捨てるために村を出た。
…これは、魔法使いとしてやってはいけないことだって、分かっていたけどね。」

「…分かっていたならどうして…?」

「さっきも言ったろう?周りにどれだけ蔑まれても、受け入れられなくても、二人でいられないことの方が耐えがたい。その想いは一緒だったんだ。」

「でも俺はっ…!」

「…魔法使いと人間の血を半分ずつ受けた子どもが存在してはならない、ってもしかして何かで読んでしまったかな?」


変わらない穏やかな声に、ゆっくりと頷く。


「そうか…。それを気にするなと言ってもあまり意味はないと思うけど…。
でもそんな誰が決めたかも分からないような理にこだわるよりも、父さんや母さんの想いを真っすぐに受け取ってほしい。」

「想い…?」


父さんは優しく微笑んだ。

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