ハルアトスの姫君―君の始まり―
いつの間にか自然と笑えるようになった。口調も刺々しいものではなくなった。少なくとも彼女に対しては。


この想いを、どうすればよいのだろう?
…彼女に伝えるべき、なのだろうか?


自分の中でゆっくりと溶けていく心を感じていた。それは彼女のおかげなのだということも分かっていた。
積み重なって膨らんでいく想いを、人は何と呼ぶのだろう。
その答えも見つからないまま、関係性に何の名前もつかないまま、ただ傍にいた。
少なくとも俺はそれで満足していた。





ハルアトス紀2009年2月。
王家の判断により、第三次ハルフェリア大戦が始まった。
剣術を学んでいた俺は当然ながら戦地に赴くことになる。





「…キース。ルナにはこのことを話したのかい?」

「いや…話していない。」

「まさか、このまま行くなんてこと…。」

「…分からない。ルナに何を言えばいいのかも、何もかも。」


俺が多少稼ぐようになって、父さんになるべく休むようにと言ってからというもの、父さんが家にいる時間が長くなった。
ルナと出会って、丸くなっていく俺を見て、どこか嬉しそうだった。
だからこそ、こんな風に心配してくるのだろう。





「ルナを…好き、かい?」

「好き…それが何なのか、俺には分からないんだよ。」


誰かを好きになるなんてこと、したことがない。
だから分からない。…彼女を大切にしたいとは心の底から思うけれど。

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