ハルアトスの姫君―君の始まり―
「じゃあ質問を変えよう。
…ルナのことを大切にしたいと思うかい?」


この質問には肯定の意を示す。


「傍にいたいと、願うかい?」

「…でも俺は…人間じゃない。ルナにそのことを伝えていない。だからどれだけ思っても…。」

「伝えていないのに想いに終止符を打っちゃダメだよ、キース。それは少しずるい。」

「ずるい…?」

「ルナにはルナの想いがある。君と長い時間を過ごして積み重ねた大切な想いが。
積み重ねた想いの量は違うかもしれないけれど、過ごした時間は同じだよ。」

「…ルナには言わない。俺が人間じゃないってことは。」

「行くってことは?突然お前がいなくなったらルナは泣くと思うよ。」

「泣く?…どうして?」

「…はぁ。これじゃルナが可哀想だ。どれだけ鈍く育っちゃったんだろう。…ってこれは父さんのせいかもしれないけど。」

「な、なんだよそれ…。」


少しむっとしてそう言うと、父さんは少し穏やかに微笑んだ。


「キース。気付いてないかもしれないけど、もうちゃんと出会っているよ。
君が心の底から大切にしたいと思える人に。そして向こうもきっと君を想っている。まったく同じようにとまでは言えないけど、少なくともかけがえのない大切な人、だと。」


父さんの言葉が頭の中で何度も繰り返される。繰り返されればされるほど、無性に…
―――会いたくなる。ルナに。


俺は家を飛び出した。


「行っておいで。
…カリーナ、キースにもようやく大切な人ができたよ。
僕はそれをとても嬉しく思う。…僕も走って、君に会いに行きたいよ。」

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