ハルアトスの姫君―君の始まり―
「ルナ!いるか?」


ルナが一人で暮らす家のドアをノックする。
すると軽い足音がドアに近付いてくる。


「キース…?」

「話したいことがある。開けてくれ。」


ゆっくりと木製のドアが開く。開いた瞬間にいつも隣にある香りが漂ってきて心が穏やかになる。


会いたい、ただその一心でここまで来た。
明日から会えなくなると思えば余計に、…募った感情が爆発してしまいそうだった。


「は、入って?」

「遅くにごめん。」

「ううん。大丈夫。」


部屋に招かれて、そのまま歩みを進める。
暖炉に薪をくべるルナの背中を見つめると不意に衝動が走った。


「キース、こっちに…きゃっ…!」


その細い腕を引いて、そのままぎゅっと抱きしめる。
抱きしめたことは前にもあったけれど、こんな風に強引に抱きしめたのは初めてだった。


「キース…どうしたの…?」

「ルナ、俺は明日…戦地に行かなくちゃならない。」

「え…?」

「大戦が始まったんだ。」

「どうしてっ…。」


ルナの声が途端に涙で滲んだ。肩も心なしか震えている。
その震えを抑えるかのように抱きしめる腕に力を込めた。

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