ハルアトスの姫君―君の始まり―
唇を離し、口を開いた。
「それ以上は言わないで。
帰ってきたら、俺からちゃんと言うから。」
「っ…。」
俺の胸に顔を埋め、肩を震わせて泣く彼女を強く抱き締める。
不思議と自分がもしかしたら死んでしまうかもしれないという感覚はほとんどなく、もう一度必ず会えると確信していた。
―――今となっては、言うべきだったと後悔している。
その夜は彼女を抱きしめたまま眠った。
…これが最期になるなんて、思っていなかった。俺も、おそらく彼女も。
目覚めた時、彼女はまだ夢の中にいた。
眠るその唇にもう一度だけ唇で触れ、毛布をかけ直す。
「また、戻ってくるから。」
〝好き〟だという自覚は、あった。
でもあえて口にしなかったのは、やはり勇気がなかったからだと思う。
それを口にしたその次には自分の生まれを話さなくてはならない。それが、やはりまだどこか怖かった。拒絶の記憶は未だに自分を蝕んでいた。
ハルアトス紀2009年2月。
寒さ厳しいこの折に、俺は同じ訓練所の剣士たちと共に戦地へと向かった。
「それ以上は言わないで。
帰ってきたら、俺からちゃんと言うから。」
「っ…。」
俺の胸に顔を埋め、肩を震わせて泣く彼女を強く抱き締める。
不思議と自分がもしかしたら死んでしまうかもしれないという感覚はほとんどなく、もう一度必ず会えると確信していた。
―――今となっては、言うべきだったと後悔している。
その夜は彼女を抱きしめたまま眠った。
…これが最期になるなんて、思っていなかった。俺も、おそらく彼女も。
目覚めた時、彼女はまだ夢の中にいた。
眠るその唇にもう一度だけ唇で触れ、毛布をかけ直す。
「また、戻ってくるから。」
〝好き〟だという自覚は、あった。
でもあえて口にしなかったのは、やはり勇気がなかったからだと思う。
それを口にしたその次には自分の生まれを話さなくてはならない。それが、やはりまだどこか怖かった。拒絶の記憶は未だに自分を蝕んでいた。
ハルアトス紀2009年2月。
寒さ厳しいこの折に、俺は同じ訓練所の剣士たちと共に戦地へと向かった。