ハルアトスの姫君―君の始まり―
* * *


一時帰宅が許されたのは、その年の12月だった。


村と思しき場所に戻ってきたはずなのに、俺を待ち受けていた光景は俺の知る〝村〟ではなかった。


燃やし尽くされた、何もない場所。人だってまばらだった。建物にいたってはもうほとんどと言っていいほど何もなく、訓練所があった場所には古びたテントが張ってあった。


そこには同じ訓練を受けて来た同期の人間がいた。


「これ…どういうことだ?」

「あ、お前も生きてたのか…。」


男はそう言った。前に見た時よりもずっと顔はやつれ、服はボロボロだった。


「ああ。そんなことよりこれは…?」

「4月に一斉に焼き払われた…らしい。俺も詳しいことは知らない。
とりあえずその時に村にいた人間はほとんど全滅らしい。」


〝全滅〟という言葉がやけに突き刺さる。
俺はその男の方を振り返らずに、自分の家を目指して走った。





かつて家があったはずの場所には文字通り本当に何もなかった。
何も、だ。家の破片もなければ父さんもいなかった。
…年々老いを増していた父さんが荒れ狂う炎の中を上手く逃げられたとは考えにくい。今となってはその生存を知る術だってないだろう。
おそらく燃えた身体を判別することなど、できはしないだろうから。





「父さんっ…。」


俺はしばらく、その場に立ち尽くした。

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