ハルアトスの姫君―君の始まり―
「…だから、引っ叩かれた時には本当に驚いた。」

「あの時はっ…。」

「責めてないよ。…本当に驚いたんだ。あんなに真っすぐ自分に向き合う人にもう一度出会うとは思わなかったから。」


ゆっくりと腕から解放される。距離ができて、顔を上げると視線がぶつかった。


「最初は何となくルナに似ていると思ってた。でも全然違った。
真っすぐでひたむきなところ、表情がくるくる変わること…そんなところは確かに似ていたけれど、やっぱり別人だよ、当たり前だけど。
だけど…強く在りたいと望む姿は自分に似ていた。自分を肯定してくれる誰かを探しているところも。
ただ、ジアの持つ強さは俺にはないものだったから、純粋に憧れた。
だから…傍にいたいと思った。傍にいれば、本質的な意味で君に近付けるかもしれないと思ったんだ。」

「…あたしは、キースの強さに憧れたよ…。
剣は強くて、優しくて…いつでも冷静なところ…とか。」

「…ありがとう。
でも俺は君の傍にいても強くなれなかった。
ヴィトックスが燃やされた時、シャリアス、ジョアンナが登場した時…〝魔法使い〟が関与してくる度に気持ちが急いた。
考え方はそう簡単に変えられるものじゃないって分かっていたけど、こういうことなんだって実感した。」

「…どういう…こと…?」


一旦目を伏せてからキースは口を開いた。


「どうしても悪い方向に考えてしまう。
自分のせいでまた、自分に関わった人の道筋を悪い方向へと変えてしまう。
…ジアに関わったのは、自分が傍にいたい、傍にいてジアの真っすぐな生き方を見つめていけばいつか、自分もそんな風に生きれるかもしれないと思ったからだった。
でも心の片隅にはちゃんとあったんだ。…人に関わってはいけない、自分は関わった人間を幸せになどできないって、思っていたんだよ。」

「…そんなことっ…ないっ…!」

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