shining☆moon‐私の王子様‐



やっと離れた冷たい唇はまた私の唇を求めるようにまた近づく。

「…やめ――」

そしてまた私の唇を塞ぐように冷たい唇が押し塞ぐ。
両手でヴィンセントの胸を押してみる。
だけどそんなの意味ないことだって分かってる。
どんなに抵抗したって、私の身体はヴィンセントに支配されてる同様だから。

嫌でも、嫌がれない。
離れたくても、離れられない。


「ん…」


その苦しさのあまり、私は空気を求める。
塞がれた唇の中に、私の微妙な声は小さく響く。

今、フレンはどんな表情を浮かべているのかな?
さっきから私はこんな事しか考えられない脳になっていた。


――愛する人の前で、愛していない人とキスをする屈辱。

私はなんて恥ずかしい人間なんだろう。
何も抵抗も出来なければ何も動じる事ができない、ヴィンセントの操り人形にすぎない。


フレン、フレン、フレン。


心の中で囁く私の声はフレンに聞こえてる?


私の固く瞑(つむ)る目からは涙が一粒溢れ落ちる。

本当はフレンとしたかった。
これから先、何が起ころうとも。
だけど私の願いは儚く散っていっちゃったよ。
魔法なんてなければ良かったのかな。
ただ、自分が弱かっただけなのかな。

私のまつ毛にヴィンセントの吐息がかかり、微かに揺れ動く。


フレンは助けてくれないよね。
きっと心の中で「軽い女」って認識しちゃったよね。
もう、私の事なんか―――





嫌いになったよね。






「ざっけんな…!!!」


ザシュッ


フレンの低い声と共に、肉を切り裂くような音が響いた。
そして、私の唇から冷たいヴィンセントの唇は勢い良く離れていった。
私はやっと吸える空気を思う存分吸うとフレンを見る。


「ぁ…」

「ユリア」

目を向けた直後、私はフレンの腕の中におさまっていた。
温かくて、心地好い匂い。
私の大好きなフレンの胸。

「フレン…!」

私は力を入れて震える腕を精一杯フレンを抱き締めた。

「ユリア、大丈夫?」

フレンの優しい声が私の耳をくすぐる。

「うん、大丈夫。ありがとう」

あまりの嬉しさに、私は顔をほころばせる。
私は少し潤んだ目でフレンを見た。

「フレン…良かっ――」

フレンの柔らかくて温かくて綺麗な唇がそっと、私の目に被さった。




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