恋のはじめ
一瞬だったが、触れられた場所が熱く感じた。
咲希は悔しそうに唇を噛み締めたが、頬が赤く染まっていたことには気がついていない。
何故かその場から動けなかった。
どうしたらいいのか分からない。
今は斎藤の言葉で頭がいっぱいだった。
その時、背後から沖田が直立不動の咲希の肩を軽く叩いた。
「咲希さーん。一番組はこれから巡察でーす」
一気に現実に引き戻される。
咲希はハッと顔を上げ、沖田を見た。
「何アホ面下げて突っ立ってるんです?早く準備してきて下さい。今日は覚えてもらう仕事多いですよ」
言って額を軽く押す。