恋のはじめ
黙って食べかけの団子に目を落とす咲希をよそに、沖田は両手を少し後ろにつき、体重をかけて空を見上げた。
「隊旗の『誠』が風で揺れたら『試衛館』の『試』に見えるでしょ。だからって土方さんが隊旗に『誠』を刻んだんだけど・・・・・・・・」
一瞬間を置いた沖田を見る。
「その羽織を着るんだったら、近藤さん汚すことだけは許さないからね?」
微妙に微笑むところが余計怖い。
咲希は背中に筋が通ったように、ぞくぞくと息を呑んだ。
体は硬直し、目だけがキョロキョロと泳いでいる。
そんな咲希に、「早く食べて」といういつもの沖田の調子で我に返ったように残りの団子を口の中に押し込んだ。
「早く行くよ。あまり遅いと土方さんにいろいろ言われるからね」
立ち上がり、咲希より前を歩き出した。
背中の誠が揺れる。
「・・・・・くだらない」
咲希は小さく、今にも消えそうな声で呟いた。