蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜守護者セリ〜‡

「えらくここだけ気が淀んじゃってるのねぇ」

町へと流れ出そうとする瘴気を結界で城ごと覆うと言う力業を行使していたフェリスとシリス(快)は、突然背後から響いてきた聞き知った声にビクリと同時に身体を震わせた。

「やだぁ、何よぉその反応ぉ、失礼しちゃぁう」
「っ…セリ…どうしてここに…?」
「もぉ、おねぇちゃんが城を飛び出して行っちゃったってパパに聞いてぇ、探しにきたんじゃぁない」
「…お父様…っ帰ったらただじゃおかない…」
「お母様…お気持ちは分かりますが、今は堪えて下さい…」
「っそうね。
それに、何だか騒がしくなってきたわ」
「はい。
城から…何か出て来ます…ッッ」
「っ魔獣ッ?」

結界に向けて、勢いよく駆けてくる数匹の魔獣に息をのむ。

《グガァァッッ》
「ッッ…っ」
「っう…っ」

猛然と突進してきた魔獣は、結界に阻まれ、弾き飛ばされる。
だが、この結界も万能ではない。
何度も繰り返されれば、破壊されてしまう。
ただでさえ、たった数匹が特攻をかけてきただけで、術者であるこちらに衝撃があるのだ。

「おねぇちゃん。
この結界って魔のみを限定してるぅ?」
「っそうですが…何をっ?」
「うふぅん。
久しぶりに暴れちゃおぉ」
「セリっ???」
「おじまさまっ?」
「もぅ、違うでしょぉ?
お・ね・ぇ・さ・ま。
そう言えばまだ言ってなかったわぁ。
また会えて嬉しいわん、シリスちゃぁん」
「っ…はい…セリおっ…おねぇさま…」
「あぁん。
かわいぃん。
待っててぇ、おねぇさまがぁ、助けてあげるわん」

そう言って、腰にある扇子を優雅に広げると、結界の中へと進み、近くにいた魔獣をはたき倒した。

「いやぁん。
ちょ〜ぉ弱ぁい」

事もあろうに、そう言いながらも、次々にはたき倒し、塵へと変えていく。

「セリおねぇさまって強かったんですね…」
「…わたくしも初めて知りました…」

あっと言う間に魔獣を倒したセリは、城を見上げて一人ごちる。

「…大きなのが出て来たみたいね…。
石に見初められた三人は良いとして…。
宰相殿が間に合えば良いのだけれど…。
ナーリスが下手打つとは思えないし、レンちゃんも動いてるみたいだし、ワタシの出番はここまでね…」
「セリ…?」
「ん?
何でもないわぁ。
歯ごたえが無さすぎてビックリしちゃっただけぇ。
結界、ワタシも手伝うわぁ」

とりあえずこの場で町を守り抜く。
帰ってきた”蒼き風”を散らせない為にも、やれる事をしよう。
大切な姉と、可愛い姪の為。
何よりも守護者の一人として、見届ける為に…。


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