蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜優しさに包まれ〜‡

ナーリスの屋敷の一室。
通されたのは、可愛らしいアンティーク調の部屋だった。
微妙に居心地が悪いのは、馴染みのない愛らしい雰囲気の部屋だからと言うだけではないだろう。
屋敷に入ってから一言も話さず、一切目を合わせようとしないラダのせいだ。

「男ってやぁ〜ねぇ〜☆
ちょっとした事で空気悪くするんだから◎
幾つになってもお子ちゃまのままなんだから☆」
「っクソババァ…喧嘩なら買うぞっ」
「そうやってすぐに力に頼るから、ガキだってぇのよッ」
「ガキガキ言ってんじゃネェよッ。
この俺のどこがガキだッッ」
「そこよそこっ☆
鏡の前でお喋りしてみなさい◎
目の前に見えるから☆」
「くぉのッッ…っ」

昔からそうだったが、あの俺様なラダが、ナーリスにかかれば、本当に子どもの様だ。

「リュっスナっ◎
こんなお子ちゃまとは、今すぐに縁を切ってしまいなさい☆
せっかく久しぶりに会えたんだもの…二人っきりでお話したいわ◎」
「ッッやめろリュスナッ何されるかわかったもんじゃないッ。
さっさと用事を済ませて、こんなとこ出るぞっ」

もう好きにしてくれ…。
いがみ合う二人を見ながら、どこか自分がほっとしている事に気づく。
あの頃と変わらない賑かさ。
ナーリスが来ると、途端に元気になったラダを思い出す。
日溜まりの中で過ごした安らかで楽しい多くの時間。
ラダは数少ない外界との窓で、私以上に他人に感心のないラダには、それでも何人もの友人達がいた。
本当に心を許した者達しかいないけれど、それで十分だとむすっとしながら話していたものだ。
いつか自分にも、友と呼べる存在ができるだろうかと思いながらあの頃、それを聞いていた。

「?リュスナ?
楽しい?」
「えっ…はい。
まるで時間が巻き戻ったようで…。
私…幸せだったんだな…と…」

なぜだろう。
泣きたくなる程切ない。
そう感じていれば、本当に涙が零れた。

「っリュスナっ…っ」
「ふふっまったく、カワイイ子ね◎」

おろおろと狼狽えるラダ。
優しく微笑みながら、そっと包み込むように抱きしためてくれるナーリス。
温かい腕の中でそっと目を閉じて思う。
捨ててしまった過去。

私は、こんなに幸せな所にいたのか…。


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