蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜過去の遺物〜‡

「弟君は、恐らく闇に魅入られているわ…。
確かに人族嫌いで、笑わない子ではあったけど、それでも今程冷酷じゃなかったわ…。
あの城の場所も問題なの★
あなたが過去に焼き払った悪趣味な城跡に、新たな城が建てられたのだけれど、あの場所に長年集められ、充ちていた闇は…浄化の炎でさえも打ち消す事ができなかったの。
弟君は、その闇に感化されてるの…★」
「昔あなたが何度も城へ足を運んで来ていたのは、もしかしてその”闇”のせいですか…?」
「ふふっ、そうよ★
あの場所はね、元々瘴穴が開きやすい場所なのよ。
一時は物凄かったわね〜★
私には、城全体に黒い霧が取り巻いているように見えていたわ★」

だから心配だった。
光を纏っていたリュスナでさえも黒く塗りつぶされそうな程の濃い闇。
ふっと時折陰る表情に嫌な予感がしていた。
そして案の定、リュスナは自ら命を断つ決断を出してしまった。

「この”金の姫の腕輪”は、あの場所の瘴穴を塞ぐ為の物よ。
強力な闇を打ち払う力を持っている。
クライネル国の王宮、あなたの城があった場所。
あそこは大昔、魔界と繋がってしまう程、大きな瘴穴があったの」
「何でそんな場所に国ができたんだ?」
「一時期、完全に閉じた時があったの。
面倒な事に、瘴穴が開きやすい場所って言うのは、土地神の加護が強くなるのよね★」
「?ではこの腕輪は、再び開いた瘴穴を塞ぐ為に精霊王から金の姫に贈られたもの…?」
「そう◎
だから、物語りとはちょっと事情が違うの☆
まぁとにかく、やらなくちゃいけない事は…☆」
「…瘴穴を塞いで…更に城に充ちた闇を払う…」
「…リュスナ…お願いだから、馬鹿な事は考えないで…今回は私とラダに任せて」
「?私にはお手伝いできませんか?」
「いいえ。
確かに力を借りられるなら借りたいわ。
けど…それによってあなたが辛い思いをする事だけはやめてほしいの」
「?無理はしませんよ?」
「そうね。
あなたは昔から出来ることしかしないわ。
でも、その”出来ること”が、あなたは沢山ありすぎるのよ…」

普通ならば諦める事も、やれば出来る事を知っているリュスナは、それがどんな犠牲の上に成り立つ事であっても、やり遂げてしまうのだ。
自分の命と引き換えだとしても…。

「まだ試していませんが、魔術も昔と同じく使えるはずですし、マリスを解放する為にも、協力させてください」

強い光を宿す瞳。
昔と全く変わらない輝きが見える。
あの時、自分やラダは近くに居なかった。
でも今回は違う。
もう二度とリュスナを世界の犠牲にはさせない。

「いいわ◎
けど約束して、絶対に無茶をしないって…。
あなたに何かあれば、悲しむ人が大勢いるのよ。
ちゃんと後ろを確認してちょうだい。
きっとあなたを想う人と、目が合うはずだから◎」



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